ブラック企業期

#25 八木沼という男

僕が辞める要因。それはもちろん人間関係が原因だった。 ここで新しい部署の課長について触れておく。40代くらい、にやけ顔を見ると絶妙に腹が立つこの男の名前を、ヤギのような顔つきから八木沼とでも呼んでおこう。八木沼は僕が司会を務めていた生産会議に…

#24 謎の営業部

広域営業課。広域は広いエリアという意味だと勘違いしていたが、そういう意味では無かった。 通常、我々は塊として加工された鉄を鉄の加工業者に卸すのが仕事だ。だが広域営業課の仕事はそうではなかった。僕らの得意先は車会社や鉄道会社など、すでに加工さ…

#23 最後の1年

横一列で始まった社会人レースの第一関門。何十人もいる中で僕(と他数名)だけ昇進できなかったことで、かなりの精神的ダメージを負うこととなった。 今になってよくよく考えてみると、昇進できなかった理由が様々浮かんできた。営業ではパッとせず、事なか…

#22 自分ができない側の人間と気づいた日

係長から物流費の課題を課されてから、1週間、2週間…どんどん月日は過ぎていく。係長からは進捗の確認も無い。 僕は「どうせ上が思いつきで言ったんだろう、それにもうこんなこと忘れただろう」と高を括った。大いに括った。それ以降この課題に真剣に取り組…

#21 分岐点

僕が東京に来て配属された東京業務課は、僕と係長、そして女性社員2名の計4人の小規模な部署であった。 係長は僕が東京で研修を受けたときにマンツーマンで教えてくれた人で、仕事上では頼りになり、周りともうまく付き合うが、多くの社員と違い、群れること…

#20 東京

と…東京!! ついに、ついに僕は東京に戻ることができる!僕は一人その興奮を噛み締めていた。 東京に異動になったのはもちろん理由があった。東京にも大阪と同じ業務課があったのだが、僕一人がそこに吸収されることになったのだ。 当初の会社の目論見では…

#19 束の間の平穏

僕の現在の職業はケースワーカーだ。ケースワーカーは仕事上様々な疾患の人と向き合うことになる。今だからこそわかるのだが、代官山課長はおそらく何らかの認知症(認知症と言ってもいろいろな種類がある)を発症しており、会社でうまく立ち回れることができ…

#18 今も役に立っているスキル/精神疾患について

大変だった生産管理であったが、この業務をすることで今後の人生のプラスになったことがいくつかある。 一つ目は仕事効率を上げるために、パソコンのあらゆるショートカットキーを覚えたことにより、作業時間の短縮が可能になったこと。 二つ目はエクセル関…

#17 課長にも容赦のないブラック企業

代官山課長が出社してこない。電話を掛けてみるも繋がらない。 これはいよいよ事故か何かあったのではないのか、と、部長からちょっとお前が見てこいと言われ、上司の安否を確認するため課長が住んでいる江坂駅まで迎えに行くこととなった。 「自分の上司が…

#16 代官山課長

僕が初めて働いた会社では新しい上司が決まるとその上司に電話をして「宜しくお願いします」と言う通例となっている。 新しい課長の名前は町の名前が付いていたため、代官山課長とでも名付けよう。早速代官山課長に電話をしたところ、課長は不在であったよう…

#15 組織改編の波に飲まれる僕

僕の大阪生活に転機が訪れたのは大阪に来て1年半経ったある日だった。平凡に得意先回りをし、上昇志向はなく、淡々と営業をしていたある日である。唐突に僕に人事異動が言い渡された。しかもただの異動では無く、組織改編であった。 ブラック企業にありがち…

#14 怒られスパイラル

さて、僕がポンコツ営業員で、仕事で毎日のように課長に怒られていたのだが、どういった理由で怒られていたのかについて、今になって分析してみたいと思う。 ●自分の意見が無い営業から戻り、課長へ報告を終えると、よくこんな返事が返ってきた。「それで、…

#13 初配属の裏で起きていたこと

初めての配属が東京であったらどうなっていただろうと考えることがしばしばある。あくまでもifの話なのだが、営業成績は置いておいて、相当な熱量を持って仕事に取り組んでいたのではないかと妄想することがある。 前段でもお話ししたが、研修では真面目な勤…

#12 自分の仕事ぶりについて

当時の僕は上を目指さず無難に生きる生活でも構わなかった。なにせ、僕は行きたくもない大阪のやりたくもない仕事をさせられているのだから。早くみんな気づいてくれませんか?僕はこんな仕事をするためにここにいるわけじゃないんです。今となっては本当に…

#11 長宗我部先輩

さて、前回少し触れたが、僕の配属された部署には、現在にも続く僕の価値観に多大な影響を及ぼした先輩社員がいた。歴史上の人物の名前がついていたこの人について、便宜上、長宗我部先輩と呼ぶことにしておく。 長宗我部先輩は絵に描いたようなお手本社員で…

#10 初配属先について

大阪の寮生活について、工場の寮に比べると幾分改善されたと思う。フロトイレは自室にあるし、なにより毎晩のように悩まされたエチエチな音源も聞こえてこない。壁は最低限の機能を果たしているようで安心した。ただ、僕はこう見えて(どう見えて?)自炊が…

#9 そして大阪へ

副社長の鶴の一声で人事が決まるなんてあり得るのか?ドラマの中だけの世界だと思っていたが、これはまぎれもない事実であった。会社の人事で、「多分こうなるだろう」という言葉は、実にあてにならない言葉の一つだ。実は10年後の今もこれに近いことがあっ…

#8 副社長の陰謀

大阪営業所!鉄スクラップ取引部!オオテツ…!? めのまえがまっくらになった。ポケモンの話ではない。本当に目の前が真っ暗になって何も考えられなかったのだ。頭の中はナンデドウシテの洪水が起こり、しばらく頭の整理が出来なかった。その後に続く同期の…

#7 配属決まる

会社の入社式が始まる少し前、合格者が一堂に会した説明会に話は遡る。 人事部長、人事課長と面談を行い、希望の部署を聞かれていた。 君の希望の部署と希望の勤務地はありますか? 「私の希望部署は金取引部で、希望勤務地は東京です」 「そうですか、わか…

#6 初めての退職者

同期の女性社員が忽然と消えた。 これはホラーというわけではない。予告なしに会社を辞めたのだ。 朝、いつもの様に研修室に出席した。 同期の女性社員達がざわざわしている。 聞くと同期の一人である女性社員が辞めたとのこと。 不義理な人事と、田舎町にう…

#5 厄介な隣人

ある日、研修でクタクタになった体を休めるため、早々にテレビを消し、床に就くと、女性の喘ぎ声が聞こえてきた。 「あん…ああん」 「いやっ…いやああー」 テレビから聞こえるエチエチ音源が大音量で聞こえてきたのだ。 たまにあるくらいなら良いのだが、ほ…

#4 始まった寮生活

僕からすれば若手人事になんの落ち度もない。むしろきちんと説明してくれたと思った。 が、人事課長の態度はいかがなものか? 人事を代表してここに立った以上、自らの口で説明してくれれば良いではないか。 なぜ若手社員に言わせるのか?課長自身はついに一…

#3 ブラックの片鱗

「営業推進部営業推進課長付」 これはどこだ?それに勤務地が載っていない。 僕と同様の紙を受け取った人が意外にも多くいたようで、皆首をかしげていた。 人事からの説明を待ち、しんとした研修室内。 そして人事より説明があった。 「今部署と勤務地が書い…

#2 配属決定?

「起きろ!!!!!!!!!!」 おそらくは人事部長の声であった。 会場中に響く声が自分に向けられていることに気が付くのに、そう長くは掛からなかった。そう、僕はやってしまった。 公衆の面前で、後後々世まで語り継ぐほどの大大大失態を。 「くすくす…

#1 夜行バス~入社式

都内某所深夜。大型バスに乗り込むスーツ姿の若者たち。その中に当時の僕もいた。 素性も知らない人達とバスにすし詰めにされ、半日間も揺られることを考えるとすでにうんざりしていた。 僕が新卒で就職した会社は、例年入社式の前日に社員を集め、本社工場…