#12 自分の仕事ぶりについて

当時の僕は上を目指さず無難に生きる生活でも構わなかった。なにせ、僕は行きたくもない大阪のやりたくもない仕事をさせられているのだから。
早くみんな気づいてくれませんか?僕はこんな仕事をするためにここにいるわけじゃないんです。
今となっては本当に恥ずかしい限りだ。いい大人がこんなスレた態度で仕事をしていたのだから。

当時の僕がいかにやばい社員であったかについて、こんなエピソードがある。
今思い返すだけでも穴を掘りたくなるような思い出だ。
オオテツには物流業務を担う女性社員が5名ほどいた。
配属され、しばらくたった僕に女性社員が話しかけてきた。
「君にはなにか将来の夢とかあるん?」
そもそもこの質問をされること自体がとてもマズい状況だと、今の僕は思う。
つまり、この質問は裏を返せば、毎日毎日つまらなそうな顔をして、何を考えているか分からないのだが、君は何がしたいの?と聞かれているようなものではないだろうか。
それに対する僕の返しはこうである。
「この会社を転職することですかね」
この答えを返した女性社員は皆一様に訝しげな目で僕を見て、「何それ」「この子やばくない」などの会話をコソコソとしていた記憶がある。
そして、僕も今になって思い返すと、ゾッとするような発言をしていたものだと思う。

こんな僕に対し、当然課長もキツく当たってきた。
いつしか僕は課長の説教の常連となり、周りから見ても使えない社員だったであろう。
でも僕はこんなことを思っていた。課長のやり方は間違っている。小一時間も立たせて、説教をさせ、それで仕事をしているつもりなのか?僕にだってやるべき仕事があるのだから早く開放してくれませんかね。と。
終始無感情にお説教を聞き、疲れた顔で自席に戻り、また淡々と仕事をする。

会社は会社で悪いところは多かった。
毎年大量に社員を採用し、社内でふるいにかけていく。上司を妄信できる社員は階段を一段ずつ上がり、上司と馬が合わない社員は圧力を掛けられていく。
あとから知ったことだが、僕の会社は三年以内に7割の社員が辞める。
残った3割の社員のうち、大半は会社に染まり、部下をしかりつけ、のし上がっていく。
もう一方は会社に適合できず、上司の叱責に耐えかね、精神疾患を患って辞めていく人すら少なくは無かった。
人を怒れる人こそ上に立つべきと言わんばかりに、どの部署を取ってもお叱りは横行していた。

しかし、だからといって社内ではスレた態度を取り、終始つまらなそうな状態で仕事をして良い理由にはならない。
こうして僕は自分の怒気を顕すことで周りに伝えるという、大人としては恥ずべき態度を取り、周りからの信用を失っていくことになった。