#22 自分ができない側の人間と気づいた日

係長から物流費の課題を課されてから、1週間、2週間…どんどん月日は過ぎていく。
係長からは進捗の確認も無い。

僕は「どうせ上が思いつきで言ったんだろう、それにもうこんなこと忘れただろう」と高を括った。大いに括った。それ以降この課題に真剣に取り組むことは無くなり、今までと何も変わらない惰性の生活を再び送ることになった。

僕が課題のことをすっかり忘れ去ってからしばらく経ったある日、係長が珍しく語気を荒げ、僕を詰問してきた。

物流費の件、何もやらないのか?それでいいんだな?
僕は自分の中で無かったことにしつつあった問題を掘り起こされ、少し冷や汗をかいた。
そうですね、やり方もよくわからないし。。と言ってはぐらかす。
すると一言。分かった。と言った。

ふう、これでこの件はおしまいかな。結果的に嫌な感じだったが、やり方もわからんし、これで良かったのかな。

このやり取りの後、しばらくするとその日はやってきた。

会社に出社すると、パソコンのポータル画面に社員の昇進についての文書が貼り出されていた。僕は全くピンと来なかったが、その文書を読み進めると顔面蒼白になっていったことはよく覚えている。

僕の同期の名前が次々と掲示され、位が一つずつ上がっている。
ここで言う位とは主任や係長といった役職ではなく、J1からS3(ジュニアからシニアだったか?)へ階級が一段階上がるようなものであった。Sに上がると次は主任が見えてくる。当然給料も微々たるものだが上がる。

僕の名前はどこにあるだろう。それくらいの感じで読み進める。
しかし見当たらない。

僕の心当たりのある同期は皆一様に昇進しているが、僕の名前は見つからない。
いったい何が起きてるんだ?

この出来事は今思い返しても本当に辛いし、当時はショックよりも恥ずかしさの方が上回ったのを覚えている。ほとんどの同期が昇進する中、僕の名前がどこにもない。

同期は僕の名前が無いことをどう見るだろう?笑うのだろうか?不思議に思うのか?
僕はこの状況で冷静でいられるほど鈍感では無かった。人並みにプライドもあった。自分一人で工場の生産をコントロールしていた自負もあれば、僕がいないと営業は回らないとさえ思っていた。そんな僕が昇進できなかった。。