#20 東京

と…東京!!

ついに、ついに僕は東京に戻ることができる!
僕は一人その興奮を噛み締めていた。

東京に異動になったのはもちろん理由があった。東京にも大阪と同じ業務課があったのだが、僕一人がそこに吸収されることになったのだ。

当初の会社の目論見では、大阪と東京に業務課を置いて、西と東の生産の要としてそれぞれを機能させたかったようだが、早速大阪が例の課長の件で沈没したため、それならいっそ東京でまとめて管理したほうが都合が良いという判断だったみたいだ。

このとき、入社してから実に3年という月日が流れ、僕は遂に故郷の土を踏めることになったのだ。

変な話だがこれだけの月日が流れていたが大阪になんの未練もなかった。ひとくくりにするのは申し訳ないが、僕は出会った大阪の人とはほとんど打ち解けることがなかった。

僕に大阪を受け入れるだけの心の余裕が無かったと思うし、自分の閉鎖的な性格の問題もあっただろうし、初めて働いた職場のミスマッチもあった。僕は最後まで大阪のノリ、人間を好きになることができなかったのである。

ウキウキで東京に戻るとまず会社の寮に入ることになった。会社の寮は千葉にあり、激混みで名高い総武線での通勤となった。

部屋は会社で一人暮らしを始めてからは一番キレイな部屋で、バス・トイレ別の1Kで2万円。
東京本社(東京駅)からは遠いが、かなり恵まれた居室へとグレードアップすることになった。なによりキッチンが普通のIHで、今までの電熱線からようやく開放されることになったのも嬉しいポイントだ。

東京に戻れて一人浮かれている僕。
こんな状況からは思いもよらないが、このとき実は退社へのカウントダウンがヒタヒタと迫っていたことを僕はまだ知らなかった。。。

ここからはいよいよ物語の核心に迫る。
なぜ僕が会社を辞めることになったのか。
自分の情けない実体験ほど恥ずかしいものも無いし、できることなら思い出したくもなかった。だけど、僕はこの会社を経験したことで様々な気づきを得て、今日の僕がいる。
今日まで頑張って、そして一皮も二皮も剥けることができたのだ。
だからぜひ僕がどのような末路をたどったのか、顛末を知ってほしいのだ。